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製造業で働いていると、通勤はほぼ車になります。工場は駅から離れた場所にあることが多く、地域によっては電車通勤という選択肢がそもそも存在しません。往復で1時間以上をハンドルを握って過ごしている人は珍しくないはずです。
この時間を学習に使えないか、という発想からオーディオブックが候補に挙がります。ただ、使える場面と使えない場面ははっきり分かれます。「通勤時間が読書時間になる」という宣伝文句は、半分正しくて半分は誇張です。その線引きを、車内という環境の制約から整理します。
車の中という環境の制約
まず前提として、運転中は次のことができません。
- メモが取れない。これが最大の制約です。気になった箇所を書き留められません
- 巻き戻しが自由にできない。聞き逃しても、その場で30秒戻すという操作が安全にできる場面は限られます
- 図や表を見られない。当然ですが、視覚情報は一切入りません
- 注意の一部が常に運転に割かれている。渋滞や合流で、集中が途切れます
つまり車内で成立するのは、一度聞き流しただけで筋が追える内容に限られます。ここを見誤ると、「聴いたはずなのに何も残っていない」という結果になります。
音声に向かない本
先にこちらを書きます。技術系の読書に限れば、次のものは音声では成立しにくいはずです。
- 統計・品質工学の本。管理図の読み方や実験計画法は、図と数式が説明の本体です。それを言葉で読み上げられても、頭の中で図を再構成する作業に注意を持っていかれます。運転しながらでは無理があります
- 手順を覚える種類の本。ソフトの操作解説やプログラミングの入門書は、手を動かさないと定着しません
- 財務諸表の読み方のような、数字を追う本。貸借対照表の構造を音声で説明されても、対応関係が掴めません
- 後で参照したい本。索引を引くという使い方ができないので、リファレンス的に手元に置きたい本は紙かKindleが正解です
この区別は要するに、「情報の本体が視覚構造にあるかどうか」です。図が理解を助けているだけの本は音声でもいけますが、図そのものが主張である本は音声化した時点で中身が抜けます。
音声に向く本
逆に、車内でも機能しやすいのは次の系統です。
- 思想・考え方を扱った本。トヨタ生産方式でいえば、なぜ在庫を悪と見なすのか、なぜ現地現物なのかという部分です。手法そのものより、その背後にある判断の理由を扱った本は音声と相性が良いです
- 事例やエピソードで進む本。企業の失敗事例、プロジェクトの顛末といった物語構造のあるものは、耳で追いやすいです
- 投資の考え方を扱った本。個別銘柄の分析手法ではなく、リスクとどう向き合うか、相場の変動をどう解釈するかといった原則を扱ったもの
- 一度読んだ本の再読。内容を知っているので聞き逃しても支障がなく、記憶の定着に使えます
車内で使うなら押さえたい点
再生速度を上げすぎない。速く聴けば効率が上がるように思えますが、運転中は注意資源が足りません。倍速を上げるほど、内容が頭に入らなくなります。
出発前にダウンロードしておく。工場周辺は電波が弱い場所があります。ストリーミングだと途切れます。
降車後に音声メモを残す。運転中にメモは取れませんが、駐車場に着いてから30秒だけスマートフォンに吹き込むことはできます。これをやるかやらないかで、残るものが大きく変わります。
料金と、注意しておくこと
Audibleには2つのプランがあります。プレミアムプランが月額1,500円(税込)で対象作品が聴き放題、スタンダードプランが月額880円(税込)で全作品から月に1冊を選ぶ形式です。どちらも通常30日間の無料体験があります。
注意点も書いておきます。
- 無料体験が終わると自動的に有料へ移行します。続けない場合は期限前に解約が必要です
- 月の途中で解約しても日割りにはなりません
- すべての本が聴き放題の対象ではありません。対象外のタイトルは会員価格での単品購入になります。聴きたい本が決まっているなら、登録前に対象かどうか確認したほうが確実です
- Amazonプライム会員でも別料金です。プライムの特典には含まれていません
向き不向きがはっきりしたサービスなので、まず無料体験で1冊聴いてみて、自分の通勤環境で成立するかを確かめるのが合理的です。合わなければ期間内に解約すれば費用は発生しません。
※料金や無料体験の条件は変更される場合があります。最新の内容はリンク先でご確認ください。
まとめ
通勤時間が丸ごと読書時間に変わるわけではありません。図表が本体の技術書は音声では学べず、そこは机に向かう時間を確保するしかないというのが正直なところです。
ただ、考え方を扱った本に限れば、これまで完全に消えていた運転時間を使える可能性はあります。運転しかできない時間の使い道としては、検討する価値があります。